男の痰壺

映画の感想中心です

カンウォンドの恋

★★★★★ 2021年9月20日(月) シネヌーヴォ

f:id:kenironkun:20210920193559j:plain

✳︎今回の上映「作家主義ホン・サンス」では「カンウォンドのチカラ」のタイトルで上映されましたが、ここではオリジナルと思われるタイトルを採りました。

 

原題はチカラの方らしいので、なんやろパワースポット的な意味なんでしょうか。カンウォンド(江原道)行ったら何かいいことあるみたいな。

 

ホン・サンスの最初期の映画なので、最近の煙に巻いたような作風よりは生な感情や情欲があからさまだけど、それにしてもスタイルは完成されている。揺るがないものが最初からあったことに驚きました。

 

前半は1人の女性が主役で、女友達2人とカンウォンドへ1泊で遊びに行く話。

後半が1人の男が男友達と2人でカンウォンドへ1泊で遊びに行く話。

これらが各々に飲んでのグダ話を混じえつつ、大して何かが起こることもない展開なのだが、実のところ2つの挿話が連関するようなギミックが幾つも仕掛けられている。特に心中行に来たらしいカップルが両話の後景にいて、平穏な日常の一寸先の地獄を垣間見せるあたり秀逸だ。

 

終盤、2つの挿話は連結し、明日の見えない虚無の中に置き去りにされる。それも又人の営為だとしても遣る瀬なさ過ぎる諦観です。

 

1泊2日の同性たちとの景勝地行で得るものなどなく心の傷を抉り合うのが関の山だったり。その不毛から目を背けて生きるのが人の営為だとばかりのホン・サンス節だが、凡俗な日常に時に差し挟まれる非日常が更なる業苦を垣間見せる。男と女はそんなもん。(cinemascape)