男の痰壺

映画の感想中心です

イントロダクション

★★★ 2022年6月27日(月) テアトル梅田2

冒頭、おっさんが鍼灸院の事務所の中で必死で祈っている。「どうか助けて下さい。私の財産の半分差し出しますから」とか、半分かよと思ったりするのだが、一体何を祈っていたのかその後描かれるわけでもない。

若い男が彼女を連れて歩いてくる。「ちょっと時間潰しててよ」とか何とか言って鍼灸院に行く。おっさんは男の父で何かの用事で彼を呼び出した。のだが結局その用事は何だったのかわからない。

で、男は院の事務のおばさんとテラスで語り合う。彼が幼い頃から知ってる人らしい。「昔、私のこと好きだって言ったの覚えてる?」とか何とかで男はおばさんをひしと抱きしめる。

 

イントロダクション=序章ということで、この映画は長い物語の始まりだけをを描いたもの。3つの挿話が語られるが須くその調子で、語られるものの帳尻は放逐されている。そして3話とも抱擁で締め括られる。但し、1、2話が男が女を抱きしめるのに対して3話は男が抱きしめられる。小憎らしく小粋だ。

 

ホン・サンスの映画はダラダラ行きつ戻りつする感情の機微を描いたものが主であり、これもその流れに与するものだが、1時間余りの掌篇ということもあり、やはり描き足りないの感は拭い難い。決定的に不足してるのは不穏で剣呑な予兆であると思われる。

 

物語の序の部分だけを並べた3題噺なので、一体何故とかどうなるのとかの疑問は解題されなく抱擁という気障行為で無理くり韻を踏んで帳尻つけている。それがボンクラ顔のシン・ソクホによって為されるのがアンビバレントな脱力味。世事とは所詮そんなもの。(cinemascape)

 

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