男の痰壺

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湯を沸かすほどの熱い愛

★★★★ 2016年11月16日(水) 梅田ブルグ7シアタ-4
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如何にして人生にけじめとか帳尻をつける物語だろうと高を括っていたら中盤から思わぬ展開に襟を正すことになる。
全く報われない人生を送ってきたらしい彼女だが、その報われなかったことに気付こうとしないのではなく、報われる報われないという価値観さえ持たない。
おそらく、多くの辛さや苦しさを乗り越えてきたのであろうが、よくある自己憐憫に陥ることは皆無だ。
その経験をもとに他者に助言をするが、辛辣に強いることはない。
ただ、抱きしめる。
杉咲花も伊藤蒼も松坂桃李も抱きしめられる。(オダジョーは抱きしめられないのだが)
愛というより、もう少し崇高なものを感じた。
多くの伏線が巧く機能している。
「高足カニ」や「手話」や「勝負下着」など。形骸的でなく生々しいリアリズムを伴っている。
ただ、惜しむらくは葬儀や火葬でああするなら、彼女が「銭湯」に対してもっていた思いをもっと描いてこなければ成り立たない。やや強引。 
 
報われぬ人生に気付かぬのでなくそういう価値観を持たないのだ。辛苦を乗り越えてきても自己憐憫は皆無。彼女はただ他者を抱きしめる。愛よりもう少し崇高な感じ。ただ、葬儀でああするなら彼女の仕事に対しての思いを丁寧に描かぬと成り立たない。強引だ。(cinemascape)