男の痰壺

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DUNE/デューン 砂の惑星

★★★★★ 2021年10月15日(金) 梅田ブルク7シアター2

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ほぼ完璧な映画化といっていいと思う。

何をして完璧と言うかは知らんけど、あの原作を映画化するならこうあってほしいとの俺のイメージが、出来上がった映画のフォルムと寸分違わず合致したと言うしかない。

原作を学生時代に読んだことがあって、「香料」とか「ヴォイス」とかの単語が出てくるたびに、ああ、そういう話やったなーと懐かしく思い出すのであった。

 

当時、リンチによる映画化作を見て香料を過剰摂取して予知能力を得た代わりに異形となった「宙航士」を舌なめずりするように登場させていて、然もありなむと思ったのだが、今回の映画化ではバッサリ切られておりました。

そういう枝葉のギミックを廃してでも、骨子である貴種流離譚を骨太に全うしようとしたのだろうし、その選択は全く正しいと思います。

 

主人公ポールを描くに際して長焦点レンズを多用しており、周囲との差異化や心理の揺らめきなどを際立たせる。戦略的にシュアだし、図らずものロマンティシズムさえ匂い立つ。演じるティモシー・シャラメも今まで何の興味もなかったが、唯一無二と言っていいはまり具合だ。

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴの演出は、今までも細部のガジェットなど際立った部分を認めつつも、大きな骨子の詰めの甘さが顔を出す。今回そういう大枠の物語を大事に紡いだ感がありました。

不眠状態で見に行ったが、眠眠打破の助けを借りずともアドレナリン噴出で2時間半全く睡魔は来なかった。私的には現時点での本年度外国映画ベストです。

 

当時も感じたが、今回「ナウシカ」への影響をあらためて思った。それは、サンドウォーム王蟲といった誰でもわかる類似点だけでなく、惑星の緑化 ≒浄化といった背景に横たわる希求されるべき世界の姿への共感意識の存在で、この世界観は、もしかしたらハーバート→宮崎駿ヴィルヌーヴと周回して精製されたものなのかもしれない。ヴィルヌーヴが果たして「ナウシカ」見てるのか知る由もありませんが、あの実験室の場面がそれを感じさせるのです。

 

2部作構想だそうだが、是非とも後篇も実現してほしいと思います。

 

来るべき世界への道筋を切り拓く旅路は全てを失うことでしか始まらない。男たちは逝くことで礎を築き女は母座を降り随行者となる。貴種流離譚のロマンティシズムが長焦点レンズの揺めきゆ中に香り立つ側で精緻を極めるガジェット群が物語と不可分に親和する。(cinemascape)

 

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