男の痰壺

映画の感想中心です

さがす

★★★★ 2022年2月2日(水) テアトル梅田1

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【ネタバレです】

 

「岬の兄妹」もそうだったが、片山慎三のタブー視されるテーマを攻める姿勢を一応は良しとしたい。死にたがってる奴殺して何が悪いって思ってる奴は間違いなくいるし、実際そういう事件も起こっている。

だが、俺は正義の味方面したマスコミのワンサイドな断罪を見る度に圏外にいて当事者の業苦を知りもしない余りに軽い物言いを不快に思う人間です。そんなに簡単な問題じゃないと思うから。

であるから、あの男を快楽殺人者+殺人報酬を要求するとした時点で難しい問題から逃げたと感じました。だってそうすることで断罪は100%の手形を簡単に得てしまう。

 

一方で殺される側の描写が秀でていると感じました。2人の死にたがってる女性が登場するのだが、特に圧倒的なのはALSで体が動かなくなっていく主人公の妻の描写で、彼女が動かない身体で夫にキスを求めるシーンの生な感情の表出は近来稀に見る切実なラブシーンを生み出している。ただ、そういう愛する妻の殺人依頼をする佐藤二朗の葛藤は如何にも踏み込みが甘い。結果、終盤の彼の変心が重石を欠いた。

 

映画の前半は、そういったテーマを明らかにせぬまま佐藤の失踪の謎を究明する娘の彷徨が描かれる。実はこの部分が不穏な予兆を孕んで映画的には優れている。テーマが明らかになるにつれ不穏さは解消されてしまうのも惜しいと思います。

「空白」で古田新太の娘役を演った伊藤蒼が今回も佐藤二朗の娘役で、つくづく親爺運に恵まれん子やなあと思うが、抑えた演技を強いられた前作に比して実に伸びやか。西成が舞台ということもあり令和のじゃりんこチエの趣き。瞠目しました。

 

「死にたい奴殺して何が悪い」の論理はALS妻の介護描写で補完されかけるが快楽殺人キャラ付けが全てをうっちゃり肝心なところで逃げた感がある。あらゆる手持ちネタをぶち込んだ混沌のリアルに随所で打たれるが解は無言のシャドーピンポンに託すしかない。(cinemascape)

 

 

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