男の痰壺

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ザ・バニシング 消失

★★★★ 2019年4月12日(金) シネマート心斎橋
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生前のキューブリックが、「これまでに見たなかで最も恐ろしい映画」と言ったとか。
ずいぶん前に、監督のシュルイツァー自身がアメリカでセルフリメイクした「失踪」も見たのだが、ほとんど記憶にないので、たいした映画ではなかったのだろう。
 
快楽殺人者とかサイコキラーとか、映画はこのジャンルが好きなので随分といろんな作品が作られている。
わけだが、この殺人者が、そういった後続のものに対して尚、現在も訴求力を維持する点。
それは、けっこうドンくさいって点だと思う。
警察やFBIとかを出し抜く頭脳や体技や、高踏的なロジックや、そういったものが余りない。
ターゲットの女性をひっかけようとして、悉く失敗する。
あーもう、あかんわ、俺って向いてないかも。
ってときに僥倖が訪れる。
この、脚本の時制の再構築とあいまって秀でている点だと思う。
 
ただ、いざ、2人の男が対峙して以降の展開はどうなんやろか。
何が起こったのか知りたいっていう1点突破で終盤になだれ込むのだが、説得性はあるか。
あえて、みすみす罠にかかるってのが、どうもねえ。
承服しかねる展開。
 
映画は、冒頭から不穏な空気をみなぎらせている。
明度の高いクリアな色調と相まって工芸品のような手触りを纏っている。

 

些細な日常の間断ない断片の隙間に挟まれる凶事と、ナンパが下手な快楽殺人者に訪れる一瞬の僥倖が明度の高いクリアな陽光下でシンクロする。往還する時制は鮮やかな一方で対峙のときは唐突に来る衒いない無骨。ただ正直この選択の顛末は無理筋ちゃうやろか。(cinemascape)

 

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