男の痰壺

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検察側の罪人

★★★★ 2018年8月26日(日) MOVIXあまがさき6
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大作が続いた原田眞人だが、彼にはこれくらいの規模のバジェットが相性がいい。
例によって、通常の1.2倍速くらいの台詞回しやフィルムの刻みこみを施している。
そのおかげかどうか知らんが、必要とも思えぬシーンも潤沢に挿入し世界に厚みをもたせている。
若干の苛立たしさを覚えつつ、それでも充足感を覚えた。
 
取り調べシーンってのは映画的醍醐味に満ちている。
刑事ってのは、実際に対面するとオーラが半端ない人が多い。(やくざも同じか)
それって、ある意味で役者稼業に通じると思う。
 
本来、この映画で最も役者冥利に尽きる役はモンスターと評される強姦殺人犯・松倉だ。
演じる酒向芳は努力賞とは思うが…。
だが、対峙するニノのあまりのぶっ飛んだ出来に対して霞む。
二宮和也ってのが、ここまで演れる男だとは思わなかった。
 
ただ、その入魂演技の取り調べが他のシーンのトーンと著しく乖離する。
これは、原田眞人もわかってたのだろうが、修正するのが惜しかったんだろう。
暴走に任せたってことだ。
そして、そういう映画の逸脱が俺は好きなのだ。
 
善悪論は置いといて語り口の映画として原田の資質に適合した題材。加速された台詞廻しと編集は許容範囲を超過した情報を盛り込みバックボーンに厚みを持たす。要の取調べシーンでは対峙する空気を推し量りニノの暴走を呼び込んだ。逸脱こそが映画だ。(cinemascape)