男の痰壺

映画の感想中心です

シャドウプレイ

★★★★ 2023年2月日(月) シネリーブル梅田1

今回、完全版というのを見たのだが、最初の公開版を見てるわけでもなくどう違うのか知りません。検閲でカットされた5分間のシーンが足されたもんだそうな。

名前は知ってたけどロウ・イエ監督作品、初見です。パーソナルな作風の人だと勝手に思ってたので、冒頭の立ち退きを巡る大騒乱シーンの規模とカット割りには驚かされた。予想外に骨太だが迎合的とも言える筆法で、原田眞人がやりそうな編集です。

 

最初に転落事故(事件?)が起こる。映画は、それを紐解くように過去に遡及していく。そこで男と女と女と男の話が浮かび上がっていく。改革開放路線に舵を切った中国近代史が背景にあり、激変していく景観や人心も又描こうとしているようだ。

 

見てるうちに、佳境で女たちの哀しみの情念が否応なく表出してくるのが、何だか松本清張原作、野村芳太郎監督みたいなテイストの作品やなと思いました。松坂慶子でも出てきそうな。そう思ってロウ・イエほインタビュー読んだら「野村芳太郎監督の作品に影響受けてる」と言ってるんです。これにはマジ驚かされました。えっそうなん?そういうのがしたかったんですかってなもんです。

 

バブルに踊った、踊らされた末には死屍累々。そこには数多の哀しいドラマがある。中国はこれからがホンちゃんかも知れません。

 

改革・開放の中国近代史の奔流に塗れて踊り・踊らされた男と女と女と男の急流滑り。発端の事件から紐解かれていく過去・大過去といった作劇が意外に清張的で、その中で浮かび上がる女の情念と愛惜は芳太郎的に濡れている。パッケージの新しい古酒。(cinemascape)

 

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