男の痰壺

映画の感想中心です

BAD LANDS バッド・ランズ

★★★★ 2023年10月2日(月) 大阪ステーションシティシネマ

展開が全く読めないという意味で、近年の原田眞人の映画ではベストじゃないかと思う。まあ、原作がそうなんでしょうけど、終盤で予定調和に陥るってことがなくて振れ切っています。

振り込めサギに関わる者を描いて、それが悪いこととの自問もなければ、社会が悪いのョ的な格差への言及もない。単に生きる為の仕事だと割り切ってる者たちを、よくあるヤクザ、半グレの末端で切り捨てられる弱者としてではなく、どんなことしてでも生きる個として描く。善悪論なんて原作者にも原田の頭の中にもなかったと思う。それでいい。

 

【以下ネタバレです】

そういう世界では、親殺しても弟が死んでも情緒的にかまってるヒマなんぞない。だってこれまでそういう世界で生きてきたんだし、これからもそういう世界で生きていくんだから。という心根を安藤サクラは情緒抜きで体現する。

 

原田映画のキャスティングは、業界のコモンセンスと外れたところにある一種独特の嗅覚に導かれてるようで、毎回必ずしも成功してるとも思わないが今回はいい。吉原光夫(刑事)、サリngROCK(賭場の胴元)、大場泰正(教授)、淵上泰史(東京の悪魔)など。えっ?天童よしみでっか、あの人あんま怖ないからね、上沼恵美子やったら怖かったでっしゃろな。

 

犯罪の善悪論や社会構造への言及とは隔たった地平で必死に生きる女を描いて振り切れている点で新しい。サクラはよくある強面や虚無とは無縁のノーブルを無理なく体現してる。その周辺で殺し殺される男たちは結果として彼女の生き様に加担して本望だろう。(cinemascape)

 

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