男の痰壺

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ゾンビ

★★★ 2019年12月25日(水) シネリーブル梅田2

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全てのゾンビ映画の頂点に立つといわれている本作だが、バージョンアップされた後年の作品群を見た目でみると、やっぱどうなんでしょうね。

だって、最近のは噛まれたら30秒もせんうちにゾンビになるし、高速で走る。

これは、噛まれた傷が化膿して高熱で体が衰弱して死にいたる。そこで初めてゾンビとして蘇る。まあ、ゾンビは生きてる死者ってんだから、それが当然で原則に則った変容はこうあるべきなんでしょう。

しかし、のろい。簡単に避けられる。なのであんまり怖くない。

のであるが、大挙してやってこられると、やっつけてもやっつけても次から次へとで、最後は取り囲まれてやられちゃうわけです。

太平洋戦争における日本兵ってのが欧米の兵士から見たらこんなんだったのかもとか思いました。殺っても殺っても後から後からやってくるってのは恐怖なんでしょうな。

 

これは、ゾンビとの戦いを描いた映画ではあるが、一方でショッピングセンターを売り場からバックヤードに至るまで満喫する映画でもある。

もう、ロメロは関心がそっちいってるとしか思えない。ゾンビに追われた彼らが強化ガラスの扉を開けようとしても開かなくってあたふたする。押しても引いても開かない。どないなっとんねんと。屏風仕様の扉だったんですなあ。事前にあっちこっち見て回ったロメロは、これ使えるねえとか、おっあれもええやんとか思ったんやろな。

 

であるから、後半になってやってきたバイクに乗った人間集団は彼らにとって敵なんです。てめえら、ここは俺らが最初に見っけたんだ。出て行きやがれーってなもんで、ゾンビそっちのけで人間同士が戦いだす。

ことほど左様に、ここでのゾンビは絶対的な脅威ではないみたい。

 

それでも、最後に生き残った2人はあてどないフライトに旅立つ。そのシニカルとも言える絶望感は人間の所業に対するそれとリンクしていると思われました。

 

扉が押しても引いても開かねーって屏風開きだったとかのSC各所の仕様取込みが脱マニュアルなリアルを付与。事態に対して何をどうすればという目処ない当て所なさが取り放題の刹那な悦びに紛れる。今いち怖くないゾンビの裏で人の悲しき業を描いてやまない。(cinemascape)

 

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