男の痰壺

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裏アカ

★★★★ 2021年4月9日(金) シネリーブル梅田4

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裏アカウントって言うけど、およそSNSに投稿してる大方は本名名乗ってないんだからみんな裏アカやん。

とどうでもいい話です。

 

物語の骨子は目新しくもない。

【以下ネタバレです】

仕事に打ち込んできた女性が、ふと気づくと若い子たちから半周遅れてしまっている。結婚もせず頑張ってきたのに周りの目も冷ややか。

落ち込むし、自分が組織からスポイルされてるように感じて居た堪れない抑圧に日々苛まれる。

でSNSに自分のエロ画像を裏アカであげる。一足飛びどころか二足も三足も飛び越えてしまう行為に、えっなんで?だが、NETという媒体に何らかの書き込みしたことがある者なら、そのツールのモラリティを踏み越えてしまう垣根の低さに少なからず気づいたことがあるんじゃなかろうか。

 

彼女のSNSは瞬く間にフォロワーが増えて書き込みの嵐になるが、そんななかで気になった男と会ってみることになる。

そこから物語が転がるわけだが、展開は既視感のあるプロットが多い。

一度限りの逢瀬だった彼と仕事の取引先相手としてばったり遭遇だとか、彼女に岡惚れしてる同僚が名前を特定してエロ画像を流出とか。

 

この映画が、そんなありがち展開から一歩ズレた地平でなんとか独自性を保っているのは、男のキャラ設定の異彩によると思う。

会った当初は年下でもあり、案内された居酒屋も庶民的で彼女は舐めてかかるが、空室テナントビルでのSEXを経て支配下におかれそうになる。だが、男は予想外の虚無性を帯びて彼女を放逐する。

人格の180度の振幅と変容であり、このキャラを設定できた時点で映画の底が上がったように思えます。

 

加藤卓哉という人の監督デビュー作らしいが、木村大作降旗康男といった旧来型の保守的な人の助監督を務めてたらしいのがテーマの選定において意外です。おもしろいと思う。

主演の瀧内公美は一昨年の「火口のふたり」で主演女優賞を取って、まあ俺は彼女目当てで見たようなもんだが、相変わらずの体当たりの濡れ場には気概を感じつつも、このままじゃ濡れ場女優のレッテルを貼られかねない危惧ももつんですわ。

 

行き詰まったリアル生活の中和剤としてSNSに自分のエロ画像を投稿する障壁の無さが今の時代か。出会い系的逢瀬とその後の展開はパターンめくが男の得体の底知れなさが興味を繋ぐ。行き着くのは安易な繋がりや軽忽な評価をゲロと一緒に捨て去れという提言。(cinemascape)

 

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