男の痰壺

映画の感想中心です

ジェニーの肖像

★★★ 2023年11月20日(月) プラネットプラスワン

人気の高い映画で期待してたのだが、今の時代に尚ジャンルのオリジンとして突き抜けるなにものをも感じなかった。最早この手の題材は、本作の制作以降やり尽くされてきていて、始祖としての価値も揺らいでるように思える。

 

死んだ女の魂が時空を超越して貧乏画家の前に現れる。画家は彼女の肖像を画にし、そして恋してしまう。先輩からは少女漫画のオリジンと言われたが、そっちに疎い俺は手塚治虫の短篇漫画みたいだと思った。

 

画のモデルになっているとき以外の、2人の逢瀬はいつも短時間であって内実をあまり伴わないのも弱い。もう少し2人の心が通い合うエピソードも欲しかった。そうすれば切なさも倍加されただろう。

 

ジェニファー・ジョーンズは、清楚な見た目と違って底深い女の情念を発出できる女優だと思う。「終着駅」や「白昼の決闘」のザ・女みたいな。この映画のジェニーは言わば男の理想の女性の具現化で一種の無機的アイコンであろう。彼女向きではなかった。

 

何の縁もないそれが忽然と現れたということは魔に魅入られたということで、なのに映画はそういう風には展開しない。ならば縁があったとすべき。そういう構成のロジック無視でムーディに流れる少女漫画だとしてもジェニファーの我が儚さを相殺してしまう。(cinemascape)

 

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