★★★ 2023年9月23日(土) プラネットプラスワン
「変な話なんや」と聞いていたのだが、それほど変な話とも思えなかった。要は戦場で戦友に頼まれて彼の許嫁との手紙のやり取りを代筆してるうちに、その見たことない彼女に恋してしまった男の話である。退役し帰郷して、偶然に出会うが2人は互いを手紙の相手とは知らない。まあ、最終的には互いをその人であったと知ってめでたしめでたしという寸法です。
【以下ネタバレです】
その互いがその人だと判らないってことを設定する為に、ものすごーく紆余曲折の物語が施される。その人は死んだと聞かされたが、実は生きていた、と思ったら罪に服して刑務所帰りであった、と思ったら無実の罪であった、みたいな。
「少女マンガや」との見方もその通りなんでしょうが、大映のテレビドラマみたいとも思いました、「赤い◯◯」とか。
俺らが子どもの頃、雑誌とかには必ずペンフレンド募集のコーナーがあって、おそらく少なからぬ少年少女が手紙のやり取りしてたんじゃないかと思う。で、そのうち近所に行くから会おうみたいな話になって、実際会うと想像と現実のギャップを思い知るわけです。この映画は、そのへん綺麗事すぎまんな。映画やからしゃーないけど。現実はこんな上手いこといくわけないのであります。いや、実体験に基づく感想ではありませんけど。
手紙のやりとりで醸成された恋が互いの顔・声を知らぬことですれ違う。その初期設定を細やかに紡ぐのでなく怒涛の展開を施す。大映ドラマのように増村チックな過剰なら未だしも今一萎え切らない。全てを知り傍観するアン・リチャーズの複層性の深み。(cinemascape)