男の痰壺

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白衣の男

★★★ 2021年8月1日(日) プラネットプラスワン

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*プラネットでは「白いスーツの男」のタイトルで上映されましたが、ここでは流通している「白衣の男」を採りました。

 

「イーリング喜劇」という言葉を初めて知ったのだが、1950年代のロンドンの片隅にあった撮影所イーリングスタジオで撮られた一連のコメディを言うそうです。ぴんと来ないそんな俺でも最高作と言われる「マダムと泥棒」は題名だけは知っている。子どもの頃に愛読していた佐藤忠男の「世界映画100選」に入っていたから。

その映画の監督アレクサンダー・マッケンドリックと主演アレック・ギネスのコンビが4年前に撮ったのが本作だが、どうも理に落ちすぎるというか、弾け切らない感があります。

決して汚れないスーツという世紀の発明をモノにした男の話なんだけど、消費社会に於いては商品は朽ちてくれないと新たな消費が生まれない。見てるあいだに頭をよぎったそんな正論がその通りに映画の主線で物語を転がし始めたときに俺は思ったんです。

もっとアホやないとあきまへんでーと。

 

まあ、しかし、若いアレック・ギネスのコメディ役者時代を見れたのは良かった。後にデヴィッド・リーンが彼を主演に据えて「戦場にかける橋」を、或いは「マダムと泥棒」に出てたピーター・セラーズキューブリックが「博士の異常な愛情」を撮る。イーリング喜劇の培った水脈を弩級の才能とハリウッド資本が呑んで映画史を刻印していく。

そんなロマンティシズムに思いを馳せてると世知辛い日々の悩みも少しだけ忘れることができるのです。

 

奇天烈な実験装置が異音をたてながら実験室の片隅で永久作動を続けているが誰も何なのか知らない。その掴みは期待させるがそれだけだった。経済の理を展開に持ち込むお利口が作った喜劇だけに重くて弾け切れない。大風呂敷とハッタリとケレンが足りないのだ。(cinemascape)

 

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