男の痰壺

映画の感想中心です

ブローニュの森の貴婦人たち

★★★ 2023年2月日(月) シネリーブル梅田4

ブレッソンの2作目だそう。非情で冷徹な視線はなくはないが一方でロマン主義的物語の骨法に添っているあたり模索期を思わせる。彼の資質が全面開花するのは5年後の第3作「田舎司祭の日記」からなんでしょね。

 

下賤な生い立ちの女が上流階級の男に惚れられる。生い立ちを言わねばと思いつつなんだかんだで結婚式を迎えてしまう。

が、そういうメインの話は男に復讐するために男の元カノが仕掛けた策謀であった。という話が外枠にある。

この2重構造がどうも上手く機能していない。当然ながら観客の生理は内枠のメロドラマの方を志向する。描写の配分もそっちが中心になる。であるから元カノの性悪女はたまに出てきてあれこれサジェストするぐらいで、そこにはサスペンスがない。ブレッソンの本分は性悪元カノの方のはずなのにと思うんです。そんなんで何だかどっちつかずの中途半端な印象。

 

篇中最も印象的なショットは、彼女が素性を明かした手紙を仕事で遠出する男に渡そうとする。しかし、突風に吹かれて手紙は舞い戻ってしまう。風に舞った手紙が彼女の顔に飛来するんですが、どんだけリテイクしたんやろなと思わせる鮮やかさだ。しかしそんなケレンはブレッソンじゃないとも思わせるんです。

 

彼女の言いたくないが言わねばならない煩悶も絵図を仕掛けた性悪女の心理も描き足りないのでサスペンスが決定的に不足してる。ブレッソンのサディスティック志向開花前夜の半端さで、突風で舞い戻る手紙のショットは見事だが、そのケレンもらしくない。(cinemascape)

 

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