★★★★ 2022年4月25日(月) シネヌーヴォ
族のドキュメントなのだが、もっとも映画的な興趣があると思われる敵対グループとの抗争話とかありません。
もっと言えば、不良なんだからシンナーやって素人からカツアゲして女輪姦してみたいな外道な部分はオミットされている。そりゃそーでドキュメントでそれ見せるわけにはいかないんだろう。
結果、こいつらなんやかんや悪さしてるけど根っこのところじゃけっこうええ奴なんちゃうんみたいな印象を見る者に与える。それは、一面では真実なのだろうが、負の一面が描かれない点でやはり片手落ちであろう。
この映画で力点を置いて抽出されるのは、グループ内の統制を保つ為に行われている規律の遵守で、言ったこと守んねえ奴にはヤキ入れてシメるだけかと思ったら、まずは、説得・説明・言い分の聴取なんです。まあ、埒があかないと顔に蹴り入れたりはしますけど。
2つのシーンが印象的。パー券の売り上げ何十万かをどっかになくした奴を茶店で詰問する。もうひとつは、定例の走りに来ない奴をしめるシーンで、そいつは、1人で遊んでる方が楽しいって言うんです。ドロップアウトした奴らの集団が新たな規則で統制される矛盾を露呈して考えさせられる。
対象によく食い込んだドキュメントで、この時の3代目総長、本間優二は柳町光男の次回作「十九歳の地図」で主演に抜擢されて俳優デビュー。本作には関係ないけど7代目総長の宇梶剛士も俳優として活躍しています。
グループ内の不文律や統制を乱す者への聴取・説明・説得が繰り返し描かれるが、それは我々の職場・コミュニティ・サークルでのそれと似たり寄ったりで、ドロップアウトして来た者が再び排撃される。矛盾の露呈とアイロニー。消去された過激と溢れ返る言葉。(cinemascape)