男の痰壺

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ビヨンド・ユートピア 脱北

★★★ 2024年1月15日(月) 大阪ステーションシティシネマ

北朝鮮→中国→ベトナムラオス→タイ→韓国、12000キロの行程が唯一のマシな脱北ルートで、中国・ベトナムラオス親北国家なので、そこで脱北者だとバレると捕まって強制送還される。強制送還=死です。そこを80代の老母と幼い娘2人を連れた夫婦が往く。彼らは準備を整え覚悟を決めてその行程に臨んだのではなく、収容所に入れられる身の危険が迫って衝動的にやむなく中国との国境を越えた。とまあ、聞くだけでムリって思われる話なのだが。

 

素材不足や或いは表に出来ないことの多さ。そこを呑まないと仕方ないドキュメンタリー故の描き足りなさが、どうしても届き切れていない感につながる。結果どっかで見聞きした程度の内容にしかなっていない気がしました。

 

当然12000キロを全部歩くわけではなく、各所で韓国の著名な脱北支援者の牧師が手配した現地ブローカーが車や宿泊所を手配したりしている。それでも国境越えは山間部の難路を歩かないといけない。ベトナムからラオスに至る3つの山越えが篇中の佳境とも言えるが、婆ちゃんと幼い娘2人連れての行路の大変さが映像に定着できたかは疑問。

各国・各所でサポートするブローカーは、当然金で動いてるわけで、着の身着のままの一家が金を用意できるわけなく、そのへんの金の流れなんか知りたいとこだと思いました。

 

宿泊所で水道から出る水の量に母親は感動し、娘たちはキャラメルコーンみたいなお菓子を恐々口にして笑みを交わす。当たり前のことが何もない世界から来たのだと改めて思わされる。

 

一方で北に家族を残して脱北した女性が息子も脱北させようと手を尽くす様も描かれる。こちらは、最悪の結果に終わってしまうのだが、あらためて思わされます。北の現体制が1日も早く終焉することを願ってやみません。

 

脱北にまつわる構築されたシステムや資金の流れや幾多の犠牲と功利など遍く描き切れたとも思えぬし、一家5人の行路にしても何ヶ所かでのトピックに留まる。がしかし、保身に汲々とする独裁者の末路を見たい気持ちは改めて湧き起こる。知ったことは言えない。(cinemascape)

 

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