男の痰壺

映画の感想中心です

クレアのカメラ

★★★★ 2018年7月22日(日) シネリーブル梅田4
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映画配給会社(?)の有能社員でカンヌ映画祭に仕事で来ている女性がいきなりクビになる。
街中の小さなブースみたいなところで仕事をしているキム・ミニがファーストカット。
これは、ラストショットのアパートで荷作りする彼女と呼応して映画を締める。
おしゃれで粋で少し深淵。
 
まあ、よくある話で、プチ三角関係のもつれからの顛末小話。
ただ、その三者イザベル・ユペールの旅行中の教師がからむ。
カメラを持つ彼女(クレア)は、こうのたまう。
「私に撮られた人は人格が変わるの」
サスペンスフルだし、なんだか形而上学的でアートフルな展開が期待される。
…であるが、さっぱり何が変わったのかわかりません。
 
結局、3人はユペールに関係なくのらりくらりと事態を収拾していく。
あえて、言うとそこが良い。
人の浮世はテキトーだし、わがままだし、成り行き任せの為すがままにしかならない。
 
終盤、展望台みたいなとこで、男がキム・ミニに詰め寄る。
何、短いスカートはいて男を挑発しとるんや!
完全な言いがかりで、男は一方的に切れまくって立ち去るのだが、彼女は無表情だ。
一種の諦観が好ましくもある。
切れないキム・ミニは可愛い。
 
プチ三角関係にユペールを絡ませた効果は一見無いのだが彼女の又かの唯我独尊的な佇まいが世界を変容させる。一応は被害者であるように見えるキム・ミニも表面的には柳に風の風情。下世話な通常人の監督&社長を遠くに眺めて彼岸へと向かうかのよう。(cinemascape)