男の痰壺

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パリの調香師 しあわせの香りを探して

★★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田2

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ある技能における天才と凡人ドライバーの組み合わせという点で「グリーンブック」を、クスブった俺に高値の花の彼女がなぜか、っていう点で「ロングショット」を思わせる。

 

成功の要因の第一は主演のエマニュエル・デュヴォスのらしさによる。もう50代の彼女の俗世と隔絶したような佇まい。何考えてるかわからない能面は、イザベル・ユペールの正統後継者かとさえ思わせる。

そんな彼女が、できない感情表現の殻を破って微かに滲み出させる情動の片鱗。そんな慎ましやかな瞬間が、この映画ではものすごく雄弁であります。

嗅覚を喪失したときの慄きや、女マネージャーを放逐したときの苛立ちや、ドライバー男を訪ねていったときの安堵など。

 

男はバツイチで、母親と暮らしている小さな娘に月1とかで面会して1日過ごすのを楽しみにしている。車で走り出した親父に「どこ行くの?」と娘。親父はおもむろに後部席から紙袋を取って渡す。「何?」と取り出したそれは水着であった。あーっ、と俺の脳裏に瞬間的に浮かんだ娘のリアクション「なにこれ、ダッセー」は娘の嬉しそうな様子に打ち消された。

素直ないい子なのであった。まあ、海に着いたら土砂降りでおよげなかったんですけど。

 

天才調香師を演じるドゥヴォスの孤高の佇まいが良く、彼女が苦手な感情表現の殻を破って微かに滲み出させる情動の片鱗。そんな慎ましやかな瞬間がこの映画ではものすごく雄弁。凡庸な俺になんで彼女がの『ロングショット』的展開も年齢ゆえに生臭くない。(cinemascape)

 

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