男の痰壺

映画の感想中心です

★★★ 2019年12月22日(日) シネリーブル梅田4

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若いころ、この映画の製作ニュースを聞いて見たいと思った記憶がある。

しかし、結局公開されることがなかった。

今回見て、これじゃあしゃあないわなと思った。面白くないっていうかわけわかんない代物であったからだ。

イザベル・ユペールジャン=ピエール・カッセルジャンヌ・モロー、ダニエル・オリブリフスキーの4大スター競演で監督がジョゼフ・ロージー。加えて撮影がアンリ・アルカンに美術がアレクサンドル・トローネルと欧州の人間国宝的な重鎮ときた日にゃあ期待もするわな。

 

ユペールの経歴を見れば大きく3つの時期に大別されると俺は思っていて、「不思議ちゃん時代」「自立した女時代」「怪物・変態時代」であって、これはゴダールの「パッション」と同年製作で不思議ちゃん時代の掉尾を飾るものだ。

であるから、何考えてるかわかんないのだ。

思わせぶりで男を翻弄するが、SEX嫌悪症らしいのでナニをさせてはくれない。で、カッセル親爺はおかしくなって女房のモローを殺っちまうって展開で、その間にオリブリフスキーが出張で日本に行くのについていっていろいろ散策したりする。ゴールデン街で板前兄ちゃんについていって飲み歩いたりと、まあ、このへん「ロスト・イン・トランスレーション」を思い出させるたりするのだが、どうもなあ。製作陣は日本文化を付け焼刃でしか理解してないみたいで、ホテルの和室に平気で靴はいて上がりこんだりさせます。

山形勲演じる日本の実業家と和室で対峙したオリブリフスキーは胡坐をかけないみたいで熊のプーさんよろしく脚を投げ出して座っている。失笑でした。

 

ラストで何事もなかったかのようにゲイの恋人と日本で養魚業を始めたユペールをホテルの一室から冷ややかに眺めるオリブリフスキーと山形。

この締めは強烈にかっこよかった。

 

女に翻弄され自壊する親爺の話が本筋のはずだが、ユペール東京不思議紀行が歪にオモロイのでカッセル・モロー夫妻は味噌っかすで気の毒。終焉のあとの2人のリアリストの女に向ける視線のニヒリズムは詠嘆的だが何かが本当に語られたかは疑問だ。(cinemascape)

 

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