★★★★ 2022年10月11日(火) シネリーブル梅田4
少女が森で遭遇する不思議譚ってことで、正直こういうのは食傷なのだが、それでも見て良かったと思いました。
セリーヌ・シアマの実力に関して「燃える女の肖像」だけでは未だ懐疑的だった俺ですが、こりゃもう疑いなしだと思わされます。終盤の1シークェンスを除いて劇伴なしで、その静謐でスタティックなフレームワークはどこかエリセを思わせる。
【以下ネタバレです】
タイムリープとか言うと、食べ飽きたSFみたいでうんざりしそうだが、時間遡行がもたらすパラドックスみたいなのは皆無。少女は森の中で少女時代の母親と出会うのだが、それが現在形の母親の何某かに、或いは母娘の関係に影響することはない。
この何も無さが良い。何もないんだけど映画の基底に横たわる何か不穏なことが起こるのではないかの予断か程よい緊張を持続させるのです。
見知らぬ少女との邂逅は母親の不在と入れ替わりに起こる。そして、その少女との別れと差し替えに母親は帰還するのだ。幸福な終結です。
時間遡行による関係性の再構築とかないのが良い。その何もない物語の底に潜んでいる不穏さもやがて別離と帰還によって解消されるだろう。子どもの頃の夢と現つの錯綜を描く劇伴なしの静謐でスタティックなフレームワーク。それはどこかエリセを思わせる。(cinemascape)