男の痰壺

映画の感想中心です

エルヴィス

★★★ 2022年7月13日(水) 大阪ステーションシティシネマ10

前半1時間はバズ・ラーマンのクドいまでのケレンが時間の解体と相まって傑作かもとの思いもあった。

佳境が2つある。メンフィスのマイナーレベルのライブでトム・ハンクス扮する大佐が初めてエルヴィスを見るシーン。パフォーマンスや楽曲もだが女たちの熱狂の描写が脳髄がマヒして逝ってQの状態を余すとこなく活写して凄い。もう一つが当局から目をつけられたエルヴィスが大佐から命じられたジェントル路線をかなぐり捨ててバリバリの反抗的ソウルを歌うコンサートのシーン。ここは侠気が見る者のエモーションと同期して堪らなく熱い。

 

しかし、それだけだった。言うたらエルヴィスの人生が以降は全然ソウルフルじゃないんだからしゃーないとも言えます。兵役行って結婚して帰って来たらハリウッド映画で歌う兄ちゃんと化して気づいたら時代から乗り遅れていた。

最後は汗だくで歌う歌謡ショーのもみあげ肥満親爺であります。子ども心に覚えている彼はそんなだったような気がする。

 

エルヴィスをマネージメントする大佐じゃないのに大佐なる人物トム・パーカーの扱いが如何にも中途半端で描き足りない。最初からエルヴィスの映画やからってことで傍系に置けばいいのに、ハンクスみたいなビッグネームを配して役不足で気の毒にさえ思えました。

 

女達を脳髄から蕩かす歌唱と腰使い。ソウルが炸裂する反抗の「トラブル」。前半の2ライブシーンを佳境とするラーマンのクドいまでのケレンは時制の解体と相俟り目眩く出来。だが後半は無惨に失速する。凡化したエルヴィスの生き様を見せ切る手管が不足。(cinemascape)

 

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