男の痰壺

映画の感想中心です

サディスティック&マゾヒスティック

★★★ 2001年4月13日(金) シネヌーヴォ

良識人的風貌の小沼がSMという題材に傾倒する何かが露呈されたわけでもない。ただ真摯に付与の仕事に向き合ったのだとする中田の抑制には好感を持つ。谷ナオミとの邂逅シーンはさながら『インテルビスタ』のフェリーニとエクバーグだ。(cinemascape)

 

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ザ・ペーパー

★★★★ 1995年7月22日(土) シネマアルゴ梅田

スクリューボールなシテュエーションコメディの伝統を正統的に受け継いだオーソドックスの素晴らしさを再認識させられる。とは言ってもシーンの継ぎの巧さなんて意外なほどの凝り方。とにかくアメリカ映画らしいアメリカ映画を久々に見た気がした。(cinemascape)

 

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天国までの百マイル

★★★★ 2001年4月6日(金) パルシネマしんこうえん

巧妙な換骨奪胎であると同時にベタ泣かせの商業的陥穽には田中陽造だから落ちるようなことはない。何の個性も主張しない演出だがプロットの把握の仕方は的確。しかし、名手田村をもってしても、この貧弱ライティングでは画は平板にしか成り得ないわ。(cinemascape)

 

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ヘルドッグス

★★★★ 2022年9月16日(金) 梅田ブルク7シアター5

原田眞人の、このジャンルへの適合性を改めて感じた。といっても「リターン ハードバージョン」ぐらいしか見てないんですけど。それと、岡田准一の格闘技への拘りとビルドアップした肉体のリアリズムは、映画というものの嘘八百性を十二分に糊塗し得ていると思います。

 

【以下ネタバレです】

お話自体は、それでも突き詰め切れてない感じがする。途中の肉付けは色々趣向が凝らされていて時にホレボレするのだが、2段構えの対決にタメとコクが足りないと思います。

東鞘会ラスボスのMIYAVIが決定的に弱い。この人「ギャングース」でもハングレの親玉演ってましたが、タッパや外見はともかく台詞の押し出しに根力が足りなくて物足りません。

岡田と相性98%のサイコボーイ坂口健太郎だが、何年間も寝食共にした岡田に裏切られたっつう落胆と怒りの表現が軽い。ここは、ジョン・ウーばりに苦渋ダダ漏れの愁嘆場が欲しかった。それは乾いた原田の体質にそぐわないんでしょうけど。

 

そもそもに、岡田が潜入した目的である秘密ファイルをめぐる話が皆目俎上に上がらないのは何やろか。要するに原田にとっては展開のダイナミズムよりもディテール趣向の面白さが第一やってのがわかります。

本作の佳境は、中盤の東鞘会内部分裂の内ゲバ抗争であり、クラブでの暗殺未遂から大規模部隊の襲撃まで一気呵成に突っ走る。そこから、前述の2つの対決になだれ込んでいくのだが、そこが物足りないのは書いたとおりだ。

 

役者で印象的だったのは、岡田の警察上司の酒向芳、東鞘会幹部の吉原光夫、はんにゃの金田ですかね。みんな「燃えよ剣」からの連投みたいっすな。見てませんけど。あと赤間麻里子のグラサン・リーゼント姐御は「リターン」の極悪三姉妹の次女をまんま流用してて楽しい。気の利いた遊びだと思います。

 

当初目的のファイル奪取は放逐され東鞘会殲滅のいてまえ展開だが、多彩な人物群とディテールが原田の仕掛ける趣向と噛み合い飽きない。岡田の格闘技への拘りと肉体リアリズムは心根の童貞感を抑えて番張るに十全。彼奴も此奴もな展開はどうだかだが。(cinemascape)

 

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