男の痰壺

映画の感想中心です

サンドラの小さな家

★★★ 2021年4月19日(月) 大阪ステーションシティシネマ

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シングルマザーが親子で住めるまともな家を希求して一念発起、独力で家を建てちゃう。的な絵空事ムービーでないのはいいんですが、結局は何から何まで人様のおかげやんか。ってのもまあ、人の善意ってのを肯定するコンセプトなんだから良しとしよう。

 

でも、この映画で家を建てる話はど真ん中の骨子じゃないんです。DVにまつわる話が主線で、クソ野郎の夫から彼女が虐げられた労苦が観客にはわかっても、善意で家作りを助けてくれる人たちとは関係性が希薄で噛み合ってこない。

 

そういう大きな骨組みの齟齬はあるが、一方でいくつかのエピソードには思わぬところから射られる思いもある。

終盤で臥せっている彼女が目覚めると姑=DV野郎の母親が座っている。おそらくDVの渦中も決して彼女の味方にはなってくれなかったであろう姑の「あなたは自由よ、私はこれからも」の述懐は、DVが連鎖する本質への詠嘆を現して胸に迫る。

 

昨年見た「ジュリアン」にせよ、今作にせよ、DV夫がとどのつまり自壊して終わる。映画だからそうなるのは仕方ない。でも、現実には永遠とも思える辛苦の果てに朽ちてしまう命が後を絶たないのだ。

俺は、かかあ天下くらいがちょうどいい。

 

住む家のない彼女が多くの人の協力で家を建てるのだが助ける側の動機付けが多分にお座なりで結果何かを成し遂げた感が希薄。DV問題が根っこにあり社会学的に虐待の連鎖が浮かび上がる姑との対峙が佳境。女達の救われない歴史を表出して真フェミニズムの趣。(cinemascape)