★★★★★ 2020年8月24日(月) 大阪ステーションシティシネマ8
又吉A面の「劇場」見逃して、俺の見るのはB面のこれかよ。と忸怩たる思いで気も乗らず見に行った。で、開巻数分、彼女との待ち合わせ場所に向かう男と彼女のラインが画面に。
正直、キッツイわー思いました。
本命野郎の幕間つなぎで付き合わさることでも良しとする男と、男の気持ちに気づいてないはずないのに素っとぼけて利用してる女。
その逢瀬のあれやこれやが続く前半に欲求不満が高まる。
だが、男が彼女との関係をもとに脚本書いたテレビドラマ放送の鑑賞に集まった友人たちとの一幕で映画は方向性が変わる。
それまで、男の閉じた主体で綴られてきた流れは「なにこの女、クソビッチやん」の友人の一言で一気に客体化されて世間の風に晒される。
正直、ほっとしたし、俄然映画への興味も頭をもたげてきた。
会話の中での長い沈黙と、その空隙に込められた言外の侮蔑・同情・諫言・苛立ち。
相当に意識的にそれは撮られていて3回ある。
①鑑賞会での女友だちと主人公の会話
②写真展での彼女の友だちと主人公の会話
③レストランでの彼女の恋人と主人公の会話
この3幕の芝居の主人公に対して言うべきかどうしようかの逡巡と間の演出は久々の見ものだった。★2点加点した。
ラストでメビウスの輪のように時空がよじれてつながる。現実か妄想かというより、作り手の主人公に対する、こうあってほしいという願いのような気がした。
救われない帰結の鮮やかな帳尻合わせだと思う。
自慰的関係の充足を肯首するかのような展開の停滞が中盤で白日のもとに晒され他者からの全否定により開放される。3度に亘る会話のなかの沈黙がサディスティックにブローアップされる演出が主人公を追い詰める。円環が捻れて繋がる終局は粋な計らいと見たい。(cinemascape)