男の痰壺

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ヴァラエティ

★★★★ 2024年12月23日(月) シネヌーヴォ

アンダーグラウンドの実験映画という予断を裏切るかなりに出来上がった作品だと思う。1983年作だが、翌1984年の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の撮影トム・ディチロと音楽ジョン・ルーリーが参加してるのが大きいんだろうし、ヒッチ「めまい」にインスパイアされたという物語も難解ではない。にもかかわらず圧倒的にリアルな場末感が充満している。

 

尾行の映画であると同時に彷徨の映画であり、ジーナ・ローランズに似たサンディ・マクロードがジャジーな劇伴に乗ってNYの街を揺蕩う様は「めまい」というより「死刑台のエレベーター」を思わせる。押しに押されてデートに臨んだものの男は急用ができて帰ってしまった。それだけの関わりだが何故か気になる。って事で始まる尾行だが、恋愛感情でなく興味が募るってことを描写の積み重ねで納得させるのは緻密な脚本に依るものと思われます。

 

行き着いた帰結は、まるでアントニオーニ「太陽はひとりぼっち」の虚無の荒野のようだ。