★★★ 2021年6月20日(日) プラネットプラスワン
ジョゼフ・L・マンキーウィッツの初期作品であるが、脇のリチャード・コンテ以外知らない役者ばかりです。
又、ニューロティックと評されているが、主人公の男は精神崩壊するまで心理的に追い込まれてるようにも見えない。
戦場で傷を負い、ショック症状で私は誰ここは何処状態になった導入は、まあ、この手の設定の鉄板でさすがに吸引力がある。
退役し一般人として街中に放り出される。しかし、身の置き場がない不安は瞬く間に放逐され掴んだとっかかりを手繰っていく。
【以下ネタバレです】
この映画は終盤でドンデン返しがある。クラヴェッツなる謎の男を探し続ける展開の果てに行き着いた事実は主人公がクラヴェッツだった。
っていう現在の映画まで連綿と連なる世界反転型の帰結であります。
「シックス・センス」や「ファイトクラブ」や「シャッターアイランド」などといった作品でより巧妙に仕掛けられていく反転ショックの初期形態とでも言える。
ただ、この帰結がすんなりしっくりこない。何故なら主人公はクラヴェッツの自我を回復しないし、どうもロクでもない野郎だったクラヴェッツをさておいて、今の俺はそんな奴とは違うぜとか言って途中から関わった彼女とよろしくやっていきます、めでたしめでたし。
って、どっかでクラヴェッツの自我が回復したらどうするねんって話ですわ。
マンキーウィッツの演出は手堅く堅牢です。
記憶喪失男の名前をめぐる自己探求だが未だ見ぬ其奴の印象が強烈とまでいかぬのでサスペンスも生半可。それでも終盤は鶴瓶うちの伏線回収と世界の反転で決めてみせる。主演2人は弱いがコンテとノーランの両脇が締める。演出も習得段階にしては堅牢。(cinemascape)