男の痰壺

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ナイトメア・アリー

★★★★ 2022年4月13日(水) 梅田ブルク7シアター6

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1947年「悪魔の往く町」なる映画のリメイクだそうだが未公開作品だし当然見てもおりません。だが、原作が持っているんだろう堅牢なストーリーテリングの果てに結末できれいに落ちるところに落とされる快感は最近の作品では滅多に見られないものだと思いました。

師曰く「しょーもない新作見てるヒマあんのやったら昔の映画見んかい」を半分聞き流していた俺ですが、ギレルモ・デル・トロなら深く頷くことでしょう。

 

例によってバリバリミスリードを誘う予告篇作りやがってと思います。クリーチャーが出てきそうな怪異譚風なそれは、それ目当ての観客を落胆させるだろうし、そういうのが苦手な客を遠ざけてしまう。

この映画は怪物ナッシングの典型的ピカレスクロマンでデル・トロ演出はそれを丁寧に紡ぐことに専心してる。ケイト・ブランシェットルーニー・マーラウィレム・デフォー等も意外性のかけらもないタイプキャストで、そういうのは得てしてつまらないものだが、この安定した世界では芸達者のド真ん中芝居が物語の強度を高めているんです。

 

俺としては「シェイプ・オブ・ウォーター」よりもこちらでアカデミー賞取った方が良かったのにとさえ思いました。

 

エッジは効いてないが豊穣な厚みで縁取られたピカレスクロマンであり、意外性のかけらもないタイプキャストが揺るぎなく脇締める中、無色の立ち役クーパーは染まってゆく。もはや古典芸能。転がりに転がってストンと落ちる様はホールインワン見てるよう。(cinemascape)

 

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