男の痰壺

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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

★★★★ 2022年2月9日(水) 大阪ステーションシティシネマ12

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据わりの悪い邦題つけやがってと思う。配給会社は大概テキトーなタイトルつけとんやから「ザ・リバティ」なんかカットしたらええやんと思うのだが。

 

架空の雑誌社の廃刊にまつわる話という体裁ををとっているが、廃刊号出版のあれこれな興趣は余りない。ビル・マーレイの編集長にしても存在感は希薄。

要は記者たちが取材してきた3つの奇妙な挿話を丹念に心ゆくまで語るという村上春樹的世界であります。それは即ちウェス・アンダーソン的な世界観とものの見事に符合するのだが符合しすぎて、こんなんじゃ先の伸び代ないよなとの危惧さえ覚える。

 

とにかく最初の挿話に尽きると思う。ベネチオ・デル・トロとレア・セイドゥという半眼開きの得体知らずの男女優が形成する世界の強度がアンダーソンの脳内世界の定められた枠を超えている。映画の醍醐味とはそういう想定外の何かが映像に刻印されたときだと思うのです。

その点で2、3話は今一物足りなかった。

 

イントロダクションの趣向を凝らした動く絵本的な世界も、ジャック・タチ「ぼくの伯父さん」へのオマージュでしょうか。すごく楽しかった。これと1話目だけなら★5です。

 

半眼開きの爬虫類デル・トロとセイドゥが静止画のように画面を制圧する様が圧倒的で、この第1話のみで評価する。休刊する雑誌の記達への想いはアンダーソンには皆無で挿話の諧謔味こそが全て。その割には2・3話はお手盛りで弾けてくれない。(cinemascape)

 

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