男の痰壺

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“それ”がいる森

★★★★ 2022年10月(日) MOVIXあまがさき6

その日、俺はダグラス・サークの未公開作を見に行くつもりだったんですが、おそるおそるカミさんに今日どないすんねんと聞いたら、通常返ってくる「しんどいから家におる、どっか行きたいなら好きにし」ではなく映画行こかと言われた。今更、終わってる中田秀夫かーと思ったが仕方なかった。

まあ、さんざん予告篇を見せられていて、"それ"とやらが一体なんなんかとの興味も無くはなかったんですが。

 

始まって間もなく"それ"が何なのかは大方わかってしまうが、大概の観客が「はあ、そっち?」と覚えるであろう落胆は俺の脳裏を周回して、そう来たかの予想外の中田の気概を感じ始める始末であった。

フィルム撮影と思しきレトロ感がテーマのタブロイド3面記事的なチープさと適合して、シャマラン「サイン」のアプローチを彷彿とさせる。完全復活とまでは言わないが、堅実な画面作りも相俟って中田秀夫復調の兆しを伺わせます。

 

そいつらが、こつちへ向かって来る、という戦慄をどう表現するかに腐心する中田らしく、あんまり見たことない変な動きするんですが、キモくて怖いって言えば怖いかも。

 

無味無臭の相葉クンが主役ってことで、周りにはクセある役者が揃えられた。「ヘルドッグス」「犬も食わねどチャーリーは笑う」でそれぞれ印象的だった酒向芳と眞島秀和、あと、江口のりこ小日向文世宇野祥平など。本気が伺える布陣だと思いました。

 

それがあれかの大方の落胆を見越したタブロイド3面記事なアプローチ。中田の戦略選択は結果シャマランに追随しフィルム撮影の気合も相俟り復活を予見させる。遠方からそいつが近づいて来る戦慄をヘタウマの微妙さで表現。笑いと恐怖は紙一重なのだ。(cinemascape)

 

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