男の痰壺

映画の感想中心です

サリヴァンの旅

★★★★★ 2023年7月2日(日) プラネットプラスワン

プレストン・スタージェス初見ですが、予想と違っていた、いい意味で。

篇中何度か大監督としてルビッチの名前が出る。それは、なんやろか、あっちはきっちりしたお名作を撮る巨匠で、わてはチャイまんねんでっつースタージェスなりの矜恃に思えます。

 

のっけから猛スピードで飛び交う台詞に驚く。その前に猛スピードで走る列車での格闘があり猛スピードの2段重ね。そして、一呼吸おいて又もや猛スピードのカーチェイス。もうわやくちゃです。

 

画面内でのスピードは、そこで一旦収まるのだが中盤以降は展開のスピードが尋常でない。底浅な内容かと思うと底の下に未だ底があり、その下にも又もや底があったという。今だと軽く2時間半くらいになりそうな物語だが、これを90分で語り切ってしまう。機に応じて端折ることの大事さを改めて思う次第です。

 

金持ち監督サリヴァンが本当の貧困を知る為に浮浪者になって旅をしてみる。但し大層なバックアップ付きで。この前半の緩さを手を変え品を変えのスピード感で修飾する。やがて、バックアップを無くして、更に本当のドン底に落ちる。ここからは展開のスピードが加速するわけです。あゝ、映画ってショットの連鎖だとか知れたこと言う前に緩急ある構成だよなと思わされる。

 

サリヴァンにジョエル・マクリー、旅の途中で知り合い同道する売れない女優志願の女(役名も女としか表記されない)にヴェロニカ・レイク。そんなに俺には馴染みのなかった2人ですが、この映画ではものすごーく魅力的です。「死の谷」や「奥様は魔女」とか見てみたいと思いました。

 

冒頭からの台詞やアクションの狂騒スピードが一段落したあとは展開の3重底ともいえる構造が予断を裏切り続ける。場当たりともとれる軽やかさで。役名すらないレイクがホーボー生活を経て変わり終盤で見せる疾走に感動。映画とはフィルムを切ることだ。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com