男の痰壺

映画の感想中心です

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★★★★ 2018年2月25日(日) 大阪ステーションシティシネマ11
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映画館でこの映画の予告篇を何度か見ていて、フィルム撮影と思しき画面から並々ならぬ拘りを感じていた。
 
役者・斎藤工にさほど関心を持ってはいなかった。
が、演出者・齊藤工には今後、注目していきたいと思わせる出来である。
 
葬式から始まり、亡き人の生前を参列者が語る。
と言えば、黒澤の「生きる」みたいなのだが、その部分はキャスティングの奇矯で保たせた感がある。
むしろ、話としては、ありがち話である家族をめぐる部分が演出的に冴えている。
 
取立て屋のすり硝子越しの顔・姿。
病室で消える手。
こういうショットの発想はセンスだと思うのだ。
齊藤工にはセンスがある。
 
キャスティングセンスも良い。
特に母親役の神野三鈴が薄幸感と優しさをない交ぜ絶妙。
松岡茉優も抑えた演技が好感を持てる。
 
『生きる』現代版的構造に陥るところを葬儀シーンへのライブ感傾注により回避し、結果一家の過去時制のみが鈍色に純化されて浮かび上がる。磨り硝子越しの取立屋はじめフラッシュバックされる鮮烈なイメージは演出を左右するリアルの抽斗に裏打ちされている。(cinemascape)