男の痰壺

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一万三千人の容疑者

★★★ 2019年2月24日(日) 新世界東映
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1963年の吉展ちゃん誘拐殺害事件の映画化。
13,000人とは捜査線上に上がってシロとされた数であって気が遠くなりそうな労力である。
事件後まもないころの映画化であるし、又時代もあったろう、犯人と子供の2人だけの描写や殺害に至る経緯は描かれていない。
そのへんが、後年のTVドラマ化作品に及ばない点と思われる。
 
何度か身代金受け渡しはすっぽかされるのだが、よいよってときに主人公の主任刑事は非番で家に帰ってるてのがリアリティで、そういう労働のリアリズムは映画では考慮されないのが普通なのだ。
ただ、なぜ、まんまと金を持ち去られたかの経緯はあいまいな描写である。
 
総じて堅実な作りであるし、新劇系の役者の登用も成功している。
犯人役に井川比佐志、その情婦に市原悦子だが後年の活躍を窺わせて印象的。
 
『天国と地獄』→「吉展ちゃん事件」→本作という微妙な立ち位置で制作された為に踏み込めずケレンとハッタリに欠けるにしても時代を映した堅実な作り。肝心要の時に非番で家に帰った主任刑事は労働のリアリズムの衒いなき顕れ。新劇畑の役者陣の滋味が良い。(cinemascape)