男の痰壺

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家族のレシピ

★★★ 2019年3月16日(土) 大阪ステーションシティシネマ10
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主人公の父親が急逝してシンガポールに行こうとするその心理が見始めた当初、いかにも説明不足で入り込めない。そのへん、監督のエリック・クーの語り下手なのか、編集で切られたのかは知る由もない。
が、しかし、その後の流れについても、似たような説明不足感はある。
 
これは、亡き父と母がどのように馴れ初めて、どのような周りとの確執を乗り越えていったかを息子がトレースする旅を描いたもの。
そのコンセプトに異論はないのだが、どうも主人公のアイデンテティとの密接な関わりが希薄なので、今いち感動に至らない。
 
特に、娘と縁切り状態だった祖母の描き方がわきがあまい。
日本人を嫌っているらしいことは、主人公が訪れる戦争の歴史館での残虐逸話が伏線なのだろうが、あれほど骨の髄まで染み込んだ嫌日感情が、孫の手作りパクテーで融解するのか?
そういった作劇を観客は手抜きと見透かすのではなかろうか。
 
ただ、出てくるシンガポール料理がみな美味そうであって腹が鳴りつづける。
逆に、カリスマフードブロガーの松田聖子が家で振る舞う手作り料理は不味そうで笑える。
 
異国にて亡き父母のなれ初めをトレースする主線に戦時体験の民族的わだかまりとパクテー修行の3項相互の紐解きが巧くないので真の感動には至らないが、それにしても慎しやかな語りが好感。マーク・リーの受けないギャグと聖子の不味そな手料理も良。(cinemascape)