男の痰壺

映画の感想中心です

ラインを断ち切れ 簡便さのもたらす思考停止

f:id:kenironkun:20210226084111j:image

何日か前の日経新聞の夕刊に尾崎世界観の「ぴあの向こう側に」という随想が載っていた。

これは、彼がチューボーのときに生まれて初めてライブハウスに行った思い出を書いていて、その顛末も面白かったのだが、前段では彼がタウン誌「ぴあ」のライブ情報を飽かず眺めては未だ知らぬ多くのバンドや演奏や雰囲気を空想していたことが書かれている。

今だと、どんなマイナーバンドでもネットで演奏画像とかは簡単に見れてしまう。それがない時代は空想するしかなかった。

 

俺の中学時代の「スター・ウォーズ」や高校時代の「地獄の黙示録」といった映画は、アメリカでの公開から1年くらい日本では見れなかった。その間ほとんど情報はないので空想するしかない。で、あまりに空想しすぎてようやっと見たときには空想とのギャップが激しくて落胆したのであった。

でも思うのです。何かに興味を持つ。ネットで検索して解を得る。わかったと納得して思考は断ち切れる。その繰り返しでは世界は収縮していくだけではないかと。

 

尾崎世界観が、ぴあの誌面を眺めては空想して心躍らせるチューボー時代を過ごしてなかったら芥川賞の候補にあがるようなことはなかったんやろなと思うんです。

天使の恍惚

★★★ 2010年8月27日(金) 高槻ロコ9オウラス11

f:id:kenironkun:20210221030537j:plain

「孤立した精鋭が世界を変える」と組織論を放棄した時点でマスターベーションに堕しているのに自虐史観に立脚してるわけでもない。進行形の渦中で混沌する価値観。「ごっこ」な革命の胡散臭さの歴史的遺痕跡。だが、真摯な若松を笑うことは許されない。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com

ライトスタッフ

★★★ 1985年9月23日(月) 新世界国際

f:id:kenironkun:20210221030052j:plain

反骨の一匹狼チャック・イェーガーと制度内であるにせよ命を賭したプロジェクトに身を奉じた男達の対比に単なる並立配置以上の何の意味も見出せない。どっちも偉いというならそうだが、正直アバウトだし拙いことに大味だ。ダイジェストの感も拭い難い。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com

カンパニー・マン

★★ 2010年9月11日(土) トビタシネマ

f:id:kenironkun:20210221025723j:plain

冒頭から30分は幾何学的構図も決まり物語世界への期待も持続する。しかし、2転3転する展開に感じ始めた既視感は、やがてウンザリ感へと転ずる。カタルシスも悪寒も感じない終盤の帰結。気障な凡庸。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com

ノンストップ

★★★ 2021年2月21日(日) MOVIXあまがさき1

f:id:kenironkun:20210222053148j:plain

ふっふっふっ…今はしがない一介のオヤジとして暮らしているが、俺の知られざる過去は、かつて傭兵として戦ったアフガニスタンで東洋のキメラと恐れられた男だったんだぜ、凡人どもめ、ふっふっふっ。

とまあ、こういう妄想はみーんな大好きなんだろう。この手のパターンの映画は後を断ちません。女性が主役ってーと「ロング・キス・グッドナイト」とか。

 

冒頭、モンゴルでのミッションが描かれる。このときの彼女は黒髪のロングヘアーのスレンダーな美女に見えるのだが、月日が経って現在、揚げパン屋のオバハンとして暮らしている彼女は見事にオバハンで、どっちが本当やねん、と思って調べると演じているオム・ジョンファは50過ぎてました。冒頭が若作りやったんですね。

でも、今どきの女性は50代でも若いっすから、全然大丈夫です。なんとなく鈴木紗理奈に似てる彼女も大変魅力的であります。

 

アクション映画としての殺陣とか意匠とかは取り立てて秀でているとも思えないが、例えば初めて敵に遭遇した彼女が攻撃を瞬時に受け止めてしまう見せ方などやっぱゾクリとします。

彼女の亭主も見た目冴えないし、一人娘も全然可愛くない。そういった面子がベタを承知で押しまくるのが、ベタの2乗で不可逆的に突き抜ける。

 

それにしても、北の女性諜報員が韓国に潜入してって話は大韓航空機事件の金賢姫から「シュリ」などを経て脈絡と連なっている。南北分断の悲劇に根差すロマンティシズムなんだろう。

 

韓国に潜入した北の敏腕諜報員が積年の末揚げパン屋のオバハンと化するのだが亭主も冴えず娘も不細工なのだ。そういったベタファミリーがベタ承知で押しまくりベタ2乗で不可逆的に突き抜ける。遭遇した敵の攻撃を瞬時に反応し受け止めてしまう件などゾクリ。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com

アントニオ・ダス・モルテス

★★★ 1985年12月30日(月) SABホール

f:id:kenironkun:20210221025112j:plain

意匠や設定は商業主義な定石に準拠しているのだが、そう思って見るとバイオレントもシュールも不足気味で余りにゆったりしたテンポがしんどい。勧善懲悪とは行かぬわだかまりの中行き着くところにカタルシスは無い。原色の力感溢れる画面は美しく音楽も強靭。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com

ハロルドとモード 少年は虹を渡る

★★★ 2010年9月11日(土) シネヌーヴォ

f:id:kenironkun:20210221024259p:plain

現実逃避にしか見えぬ少年の奇行の果てに正体不明の婆さんがいたわけだが、人生訓めいた更正方向ではなく閉じた世界に2人で埋没してゆく被虐性には一応惹かれる。ただ、余りに語られぬバックボーンゆえに所詮は絵空事にしか見えない。ラストはいかしてる。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com