★★★★ 2019年6月17日(土) 梅田ブルク7シアター2
はっきり言って、和製ミュージカルとしての何かを期待していたわけではない。
予告篇を見た限り、正直、TVのバラエティショーに毛の生えた程度な感じがした。
実際に前半、会社やレストランでのナンバーは、その程度だと思う。
ところが、中盤から映画は突然、ロードムービーのテイストを帯びだす。
俺は、ずっと昔に矢口史靖がぴあフィルムフェスティバルのスカラシップで撮った「裸足のピクニック」を見て主人公の女の子をいたぶる加虐性に瞠目したのだが、その後「アドレナリンドライブ」と「ウォーターボーイズ」を見て見切りをつけた。
なんだか、マニュアルに日和った感じがしたからだ。
であるから、「スイングガールズ」や「ハッピーフライト」とか見てません。
久々に見たのが「WOOD JOB」だったが、悪くはないが、所詮は周防正行の縮小版エピゴーネンが関の山かと思えた。
あれっと思ったのは「サバイバルファミリー」で、これは言わば矢口の「裸足のピクニック」への本卦還りとも言えるロードムービーで、やっと帰るとこに帰ってくれたの感があった。
どんどん堕ちていく行路がサディスティックな本性を曝け出して已まないのだ。
本作も、そのテイストを引き摺ってくれてると思った。
まあ、温いんですが。
昭和の世代にベッタリの選曲も、親爺の好みに文句あるかの開き直りである。
お世辞にも秀でてるとは言えぬダンスシーンなのだが、そこに主眼を置くことを放逐して世間から転がり落ちる往く目処立たないロードムービー化したのが矢口の開き直った本卦還りを示現する。そうなりゃ令和何するものぞの昭和歌謡釣瓶打ちも宣なるかなだ。(cinemascape)