★★★★★ 2020年6月12日(金) TOHOシネマズ梅田4
湯浅政明、初見です。
この映画、3年前の公開時に見に行って開始数分前まで席に座ってたんですが、やむを得ない電話が入って退席しました。
もし、あの時見ていたら「ルーのうた」とか「きみ波」とかも見に行ってたかもしれません。それくらいのインパクトがありました。
映画を作るに際して、シナリオに書かれたキャラクターを肉付けるのに、書かれていない仕事や家族構成や来歴とかを書き出してみる。
ってな話を読んだか聞いたかしたことがある。
それが、言外の厚みを映画にもたらすと。
タランティーノの映画なんかにそれを如実に感じることがあります。
この映画の場合、同じ原作者・監督によるテレビアニメの「四畳半神話体系」ってのがあるらしく、キャラもかぶってるようだ。豊穣とも言えるキャラ群や奇天烈な世界観のつるべ打ちは、そのへんからもたらされたものしれない。
ミニマムな世界がスパイラルに拡散して全く想定外の世界が現出する。そのめくるめくような混沌。俺は「ビューティフルドリーマー」の夢邪鬼が創出したパラレル世界や「千と千尋」の顔なしの覚醒に帰結する湯屋の猥雑に比肩し得るダイナミズムを感じた。
主線の話は他愛なくシンプルだ。
だが、それだけに肉付けする余白も大きい。
アイデアと創造力で映画の可能性はいくらでも広がっていく。改めてそう思いました。
独り好き女子を好きになった奥手男というオタク設定は、2人を狂言回しにして古今が融解する京都で虚実が錯綜する文学の裏表に塗され止め処なく拡散していく。その奇矯なイメージの奔流が何時しか2人の情動に作用する。憑物が落ちたような最後のピュアネス。(cinemascape)