男の痰壺

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ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語

★★★★★ 2020年6月28日(日) 梅田ブルク7シアター4

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若草物語」ですが、映画も見たことなけりゃ本だって読んだことありません。関心ありませんでした。

主演のシアーシャ・ローナンもいわゆる男好きするタイプではなく、他ならぬ俺もあんまり関心はありませんでした。

 

しかし、開巻5分で画面の厚みに魅入られる。厚みとは、画面内に存在するものの質と量です。この映画は演者や演出も良いのですが、やはり、特筆しないといけないのは美術と衣裳だ。美術はコーエン兄弟の作品に主に携わった人で、衣裳はマイク・リー、撮影はオゾンとアサイヤスの作品で主線を担う。個性的なクリエイターたちの要求に答えながら十分に場数を踏んできた面子です。

監督としては2作目で大作を任されたグレタ・ガーウィグを、そういったスタッフたちが十二分に支えながらミッションを遂行していく。映画の内容同様、多幸感にみちた展開です。

まあ、俺の勝手な妄想なんですがね。

 

この映画は演出面もあるが、ガーウィグの脚色者としてのアイデアと力量が大きく牽引している。

篇中、作家である次女ジョーが自作を推敲するのに原稿を部屋の床に並べて入れ替えたり削除したりするシーンがあるが、多分、ガーウィグも同じことをしたのではと想像してしまいます。

過去時制と現在時制の連関するファクターを抽出して再構成する。これが全編にわたっておこなわれており、一大叙事詩の様相を呈してくるあたり、ちょっと「ゴッドファーザーPARTⅡ」を思い浮かべてしまいました。

 

4姉妹ものというと我が国にも「細雪」があったよなと思ったりもするんですが、長女=真面目、次女=我が強い、三女=おとなしい、四女=おきゃんで奔放という図式はそっくりだ。

家族形成における性格形成は東西問わず似たものになるんでしょうか。興味深いです。

 

四女を演った女優の固太り体型がどっかで見たよなと思って見ていたが、「ミッドサマー」の花達磨フローレンス・ビューでした。「コロンバス」のヘイリー・ルー・リチャードソンともどもポッチャリ時代の到来を牽引していく希望であろう。

 

大叔母のメリル・ストリープと母のローラ・ダーンが時代の女性の生き方の指南役として圧倒の存在感を醸している。シュアなキャスティングだと思います。

 

解体・再構築された時制が連関項目を際立たせ一大叙事詩の態を成し姉妹の間を回遊するシャラメが裏支柱として浮上。次女の自我確立は大叔母・母の生き様を彼方に見ながら悠久の時間軸の中で為されていく。その巨視感は圧倒の美術と衣裳に担保されている。(cinemascape)

 

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