男の痰壺

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もち

★★★★ 2020年8月7日(金) テアトル梅田2

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過疎の村で中学校が翌年から廃校になる。

これは、その学校に通う中学3年生の女の子が主人公の話。

って言われて見たい人がどんだけいるのか疑問であります。テレビのドキュメンタリーとかで、見慣れた手垢のついた題材に思える。

 

主人公のお祖母さんの葬式から始まる。忙しく働く身内や近隣の手伝いに来た女たちを傍目に彼女は物陰でスマホいじり。ちょっとは手伝いなさいとの声もガン無視であります。

ムカつくガキやなあとも思うし、映画の便法として常套のキャラかと早くも気が逸れる。

がしかし、葬式の顛末が終わり、後日の下校の際、親友と一緒に神社に立ち寄る。ここでの中学生女子の会話のテンポとリアリティに俺は覚醒した。

この映画、出演者は全員、地元の素人です。ところが総じて皆上手い。全く構えたところもないし台詞回しも滑らかです。これを引き出した演出はすごいことだと思いました。

 

閉校というドキュメンタルな状況を横軸にして、主人公が親友の兄に寄せる仄かな想いという虚構が縦軸として乗っかっていく。この虚構部分がいい。

親友が引越し、その兄も東京へ進学することになる。別離という名の喪失のトリプルパンチ。一見サディスティックな追い込みだが、あくまで主人公はノーブルです。この世界観というか未来観は腰の据わったポジティブさに由来してるように思える。

ラストの体言止め的詠嘆も決まって、いい映画だなあと思えました。

 

1時間という短尺でもあり、色気も何もないタイトルは興行的にもったいないと思う。

 

廃校に纏わるドキュメンタル部分より全員現地の素人という配役が演じる虚構性がよりリアルを照射してしまう。女子高生2人の会話のリズムは得てして沈降しがちな時間を未来へ解放する。別離を噛みしめ走る彼女の体言止めは優れてアイドル映画に近似しゆく。(cinemascape)

 

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