男の痰壺

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記憶にございません!

★★★ 2019年9月24日(火) TOHOシネマズ梅田2

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何か期待してたわけでもないんだが、それでもあんまりだと思った。

 

俺は、三谷幸喜に好意的な男である。あの、総すかんを食った「ギャラクシー街道」でさえ★★★★をつけたほどにだ。

でも、大きな岐路に立って行方の定まらない現在の日本の政治という現実を前にして、40年代アメリカのキャプラ的ヒューマニズムくらいしか拠るところがない三谷にとって政界コメディは鬼門であったとしか言えないだろう。

 

だいたい、主人公の設定が破綻している。けっきょくは真心のある良い人間なのだったっていうなら、支持率が一桁の史上最悪の総理ってのが全部虚構であったことになってしまう。そんなの全然おもろないわ。

やはり、そこは何らかの大きな変節を起動する出来事ってのが不可欠だったのじゃなかろうか。これでは単なる出来レースを見せられてるようなもんだ。

 

まあ、一応はネタとして安部政権のあれこれを取り入れてるらしい。「おともだち」への利益斡旋や日米交渉におけるゴルフ外交。夫人の不倫スキャンダルはアッキーネタか。それらをヒステリックな左派陣営の論調ではなく幾分好意的なスタンスで描いているのが三谷の巧まざる深層をあらわしている。

のだと思いたい。

 

草刈演じる官房長官キングメーカー的暗然たる権勢をふるうのを見て、それいうなら党幹事長じゃないのかと見てるあいだ思っていたが、かつての金権政治が成立しなくなった今、メディアに訴求できるポジションが一番の権力なのかもしれない。それならそこをもっと深く掘ればおもしろかったのにとも思った。

 

けっきょく、この温い政治コメディで一番の儲け役は一貫してオチャラケしない筆頭秘書のディーン・フジオカだった。彼が出てくると何故かほっとした。そんだけ映画の根本設計を見誤ったってことだわ。

 

ソリッドな何かを期待した訳でもないが余りにぬるま湯で屁こいたレベル。史上最低の裏が本当のワルか乃至は大義の為の仮初めであってほしかった。迎合的な政権絡みネタより更なる中井VS草刈のガチンコをこそ。顔が趣味を朗々と謳う曝け出しが愛嬌。(cinemascape)

 

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