男の痰壺

映画の感想中心です

ポルトガル、夏の終わり

★★★★★ 2020年8月29日(土) テアトル梅田2

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ある老女優によって別荘に集められた一族郎党の1日の物語。まあ、ユペール御歳70近いので「老」としたが、映画の中で設定年齢はもうちょっと若い。冒頭、いきなりトップレスで泳いだりするもんだから、バーちゃん無理すんなーとヒヤヒヤです。

 

仕掛けられた枠組みは、完全にミステリーのそれであるので、さあ何が起こるんやろの興味が序盤は引っ張る。9人に及ぶ主要人物と関係の把握も割と容易です。ただ、黒人夫婦とその娘のユペールとの関係性がつかめなかったが、義理の娘と孫らしい。現夫の連子だそう。

何れにせよ、そういった肌の色や性的な嗜好などが其々の有り様に任せて泰然と混在してる様がコスモポリタンな視座である。この世界では融和が達成されている。

 

結局は大して何も起こらない。ユペールは病気で余命幾許もないのだが、そのことは薄々みんな知っているし、遺産を巡っての争いとかもない。敢えて言うなら、息子の嫁をなんとかしたいらしいが上手くいきません。

 

ただ、脈絡なく散りばめられた多くのエピソードがみんな味わい深くってすごく良い。

登場人物が対峙したときのリアクションが悉くに静的なのだが、言外の感情の機微が手に取るように伝わってくるシーンばかりだ。

 

中年の肥えて弛んだ夫が痩せこけシミだらけのユペールを抱く老人同士のベッドシーンがたまらない。慈しみと哀しみがソクソクと染み出して泣ける。

 

義理の孫が1人でビーチに行く途中ナンパされてホンワカ良い時間を過ごす。全肯定的な世界観がロメールの映画のような洒脱さだ。

 

アイラ・サックス。生粋のアメリカ人監督による作品だが、驚くほど繊細で欧州的な味わいの語りをものにしてると思った。ユペールがラブコールを送って実現した企画らしい。覚えておいていい名前だと思う。