男の痰壺

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さくら

★★★★ 2020年11月15日(日) MOVIXあまがさき3

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昔、原作を読んだ覚えがあるがほとんど忘れてました。

 

父母と長男・次男・長女の5人家族の一家の変遷史であり、次男が大学生になった現在から過去に遡及していく。

家族がひとつであった幼少期があり、子らが自我に芽生えて各々の世界を確立していく高校時代がある。

といった、まあ、普遍的なドラマがあるが、それが西加奈子原作の中島らもから連なる関西的な加虐をシャレで笑い飛ばすテイストが縁取る。

幼少期に公園に出没する「変な人」の挿話があるが、日常の中にそういった人たちがいた時代は目の触れないところに隔離してしまう現在の欺瞞を照射する。

 

高校時代の3人3様の恋愛があって、やがて転機となる事件が起こる。物語は暗転していくが、結局は皆が哀しみを呑んで噛み砕いて時間が薄めていく。再び前を向いて歩いていくしかない。そういう達観とポジティブさがある。

 

妹が犯した取り返しようのない罪を知った兄は衝動的に拳骨を振るう。そうするしかありえない納得性のあるリアクションだった。そうしたうえで血縁の断ちがたい絆の哀しみを抱えてきくしかない。

 

妹と心的レズ関係の同級生がスケバンに絡まれる件。2人の反攻をカメラは俯瞰のショットで捉える。すごいかっこいい。

 

どんな家族にだってある小さな世界の物語を愛おしむ揺るがない信念。そして、大禍による喪失や悔恨も必ず時間が癒やしてくれるという確信も。能面の弟妹は口数少なく感情の溜めもないので唐突なエモーションが発動される。モノローグがその間隙を埋めるのだ。(cinemascape)

 

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