男の痰壺

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セリーヌとジュリーは舟でゆく

★★★ 2022年5月23日(月) テアトル梅田1

3時間以上ある映画なのだが、物語が転がらない前半がすごく良いと思いました。それは、一体これから何が起こるんだという期待もあるが、なんだか知らんけど楽しそうにセリーヌを追い回しているジュリーに映画の波長が同期している為だろう。目まぐるしく移りゆく風景も魅力的であった。

 

【以下ネタバレです】

「舟でゆく」というタイトルから俺は勝手に後半は「アタラント号」みたくセーヌを下ってくようなイメージを持っていたのだが、最後にちょこっと舟は出るけど、ほぼそういう川下りみたいなシーンはない。タイトル詐欺やと思いました。

代わりにあるのが、古屋敷での幻視騒動で、全くもって想像もしなかった展開。川を下って世界が拡張するどころか、展開はどんどん収縮してしまう。内在世界に深耕していくならまだしも、いかにも表層的で、セリーヌとジュリーはキャッキャッと昼メロ見てるレベルで大騒ぎ。見てる俺はどんどんシラけていくのであった。

 

幻視騒動の合間に2つの入れ替わり挿話がある。図書館員ジュリーのフィアンセとの10数年ぶりの邂逅にセリーヌがジュリーになりすまして行きぶち壊す。見世物小屋のマジシャンセリーヌのオーディションにジュリーがセリーヌになりすまして行きぶち壊す。関係性がリストラクトされる、或いは映画の展開が延伸され得る破壊だがそうならず尻切れトンボに終わる。

 

最後は幻視が実体化、物語は反転しループする。だけど、それがどうしたって思ってしまった。リヴェットはヌーベルバーグきっての理論家だそうだが、頭良すぎて伝える術に欠けるんじゃなかろか。そんなこと思いました。

 

彼女達がキャッキャと騒ぐ程には館の幻視譚が面白いとも思えぬので全尺の半分を費やした後半がひたすら冗長。屋外で展開する追跡行が魅力的な前半。それが捻れていく過程でもっと多彩なギミックを仕掛けて欲しかった。入れ替わりは逸脱が不穏で良かったのに。(cinemascape)

 

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