男の痰壺

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ボイリング・ポイント 沸騰

★★★★ 2022年7月27日(水) シネリーブル梅田2

映画史のなかで全篇1カット映画ってのが折に触れて出てくる。旧くはヒッチコックの「ロープ」や近年ではイニャリトゥの「バードマン」だが、前者ではフィルム交換の為に黒味を挟み後者ではCGで糊塗してたと思われます。今回はCG無しの正真正銘1カットを謳ってますが、それが無くても充分にエキサイティングな映画になったんじゃないかと。でも、確かにこのライブ感と緊張感は1カットの醸すもんだとは思います。

 

人気レストランのオープン前から1時間半の顛末を描いてるのだが奇を衒ったものは全くない。過労のもたらすミスや待遇をめぐる軋轢やさまざまな顧客の要求やそれへのフロア要員の対応だけです。

これで映画になると思った作り手の確信を俺は支持したい。それは、おそらくリアルな体験に基づいてるものだと思うから。

 

役者陣のプレッシャーは相当なもんだったろうと思います。特に1時間過ぎたあたりからは加速的にトチれないという思いがのし掛かる。そういう意味で副料理長役のヴィネット・ロビンソンは土壇場でのエモーショナルな演技をこなして出色であった。

 

レストランでの1時間半の顛末に気を衒ったものはない。過労の齎すミスや待遇を巡る軋轢や多様な顧客の要求とそれへのフロア要員の対応だけ。1カットのライブ感は必要要件だが根底にあるのは市井の営みの中にもドラマは見い出せるという作り手の確信だろう。(cinemascape)

 

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