★★★ 2023年3月26日(日) MOVIXあまがさき2
「仮面ライダー」の最初の放映は俺が小学生のときだったが、子供心にも、なんだかな〜と思ったのを覚えている。俺より1歳上の庵野も多分そうやったに違いないと思うんです。なんでキックされただけの怪人がヨロヨロよろめき倒れてドカーンと爆発するのか全く解せませんでした。今回、ライダーキックは超高空から猛スピードで落下する破壊力が加味されて相手を文字通りぶち抜く。こりゃ死ぬわなです。
雑魚ショッカーを倒すときも血しぶきが上がる。殺戮の生々しさを取り入れたかったんでしょうが、その問題は深掘りもされない。やってみただけみたい。CGも安かった。
深掘りするところは真摯に残虐なまでに深掘りし、なんだかなーの部分は諧謔味をふりかけズッコケてみせる。そういうのはシネスケでペペロンチーノ氏が指摘してるとおり三池崇史の専売特許みたいなもんだが、俺はもはや間尺の知れる三池でこの題材を見たいとも思わないんです。庵野にはもっと違う地平を見せてほしかった。
それなのに、映画の後半は新造語の飛び交う内向世界へと沈殿していってしまう。まんま、それってエヴァと同じで、森山未来のイチローなんてエヴァのカヲルのイメージです。正直、又かよと思った。なんか食傷でした。
初代ライダーで小林昭二が演った喫茶店マスターのような市井の人々は一切出てこない。出てくるのは諜報組織や政府や科学者ばかりで、そのへん「シン・ゴジラ」なんかと通底するところだ。限界が露呈されたような一抹の寂しさを感じました。
冒頭の意味ないド派手は期待させるがシャレの中からマジが滲む塩梅はシャレ方向が振り切れぬのでどうにも半端。庵野の真面目気質は『エヴァ』世界と同質でその既視感が底割れを招く。改造された悲哀もどこ吹く風。ライダーキックの破壊の解釈のみは納得。(cinemascape)