男の痰壺

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M3GAN ミーガン

★★★★ 2023年6月21日(水) TOHOシネマズ梅田9

人工知能が反乱を始める。繰り返し語られてきたモチーフであるし、何か新しいものが付加されたとも思えないのだが、むしろその古典的な題材を丁寧に充足しようという意図は一定の強度をもたらしている。

細部には疑問も多い。このAIロボ人形のミーガンが設定された縛りを超えるきっかけは多分にあやふやだし、自分の行為を糊塗しようとするプログラムはどこから発生したのかとか。のっけから暴走すべくして暴走したようにしか見えません。

 

本作の新しい点は、自閉的な子どもにとっての依存の対象となる危うさをかなり徹底的に描いたところかもしれない。実際に今の子どもたちだってゲームに依存しまくってるわけだし、そりゃミーガンみたいなのがいれば寝ても覚めてもミーガンミーガンってことになるやろね。自我を持ったAIに人類の次世代は従属させられるのであります。

 

チャットGPTの脅威が巷間言われてますが、そうなるだろうと思われていた未来が10年、20年一足飛びに到来してしまったような衝撃です。2045年と言われてたシンギュラリティはもうすぐそこなのかもしれない。

ある朝、空を見上げたら何百もの自爆ドローンが空を舞っていた。AIが人類を害獣と見做して駆除を開始した「審判の日」。俺が生きてるあいだに来てしまうのか。

そういう時代に即応する戦慄が、この映画を絵空事だと笑うことを躊躇わせるのです。極めてキャッチーな題材だと思います。

 

AI細部の設定には為にする感があるにしても、このテンプレ設定を丁寧に見せ切ってやろうとの意思は感じる。何より自閉的な子どもにとってそれが強固な依存対象となることを嫌らしいまでにしつこく描いた点。そういった時代がすぐそこに来ている戦慄がある。(cinemascape)

 

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