男の痰壺

映画の感想中心です

バックドラフト

★★★★ 2023年7月12日(水) 大阪ステーションシティシネマ

昔は監督ロン・ハワードにずーっと興味がなかったので本作も見てませんでした。彼はお人柄はいいけど鬼面人を威すような斬新さはなく、人の歩いた道を通って無難な仕事をする。大外れもない代わりに大当たりもない。そんな印象。

でも、この映画の前半で、兄弟の確執とそれでも止み難い肉親愛が衒いなく描かれるのを見て、実直なこともそれはそれで得難い特質ではあるなと思いました。裏の裏行くことが良しとされる時代だから尚更だし、まあ俺自身が歳とったってのもあるんでしょう。

 

火災があって消防士たちの仕事がある。もう言わばそれだけでいいのに、放火犯をめぐるドラマが後半を牽引する。傍に配置されたデ・ニーロが犯人を追い詰めるのだが、主役の兄弟を立てないといけなくデ・ニーロは退場。このアンバランスさが物語の強度を弱めている気がする。

 

バックドラフトという火災現象の怖さを現すに、あたかも火の元の部屋が呼吸してるかのような描写が秀逸。

キャストではジェニファー・ジェイソン・リーを初めていいと思った。サザーランドも範囲内の出来だが画面をさらうボルテージ。

 

男同士の兄弟の距離感が良く別れた夫婦関係の微妙さもリアリティがあり消防士たちの職能的側面も十全。これで火事があれば映画として事足りるのだが放火犯と政治家を絡めてベクトルは拡散。それでもデ・ニーロ・サザーランドの滋味が問題を為し崩す。(cinemascape)

 

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