男の痰壺

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彼奴は顔役だ!

★★★★★ 2024年1月15日(月) プラネットプラスワン

キャグニー主演ってことでB級のギャング映画みたいな邦題つけられてますが、原題はバシッとストレートに「Roaring Twenties」=「狂騒(狂乱)の20年代」です。それは第1次世界大戦が終わってドン底から復興するアメリカで産業・文化が狂い咲いた10年間がNY市場の暴落と世界恐慌で終焉したその期間を指す。

兵役から復員した男がその波に乗って成り上がり、そして落ちる。まあ、描かれるのは施行された禁酒法と密造酒で儲ける話で、産業・文化の勃興はそんなに描かれないんですけど。それでも狂乱の雰囲気は目まぐるしい展開のモンタージュと随時の世相トピックを差し挟むことで見事に表現されていたと思います。

 

そんななか、映画のもう一つの柱として為さぬ恋の話がある。恋といってもキャグニーですから、強引に押して押しまくって手にしたものと勝手に思ってるだけで、彼女の心は別の優男に当初から向かっていた。彼の人生の凋落と同時に彼女への想いも又終焉を迎える。

キレ芸を旨とするキャグニーだけど、グッと堪えて彼は落ちていく。侠気とはこのことやと思わせます。そんな彼を常に側から見ている年増女のグラディス•.ジョージの存在も良い。

 

1939年の作だが、本作でイヤな野郎を好助演していたボガードを主演に抜擢して1941年にウォルシュは「ハイ・シエラ」を撮る。また同年、キャグニー主演の「いちごブロンド」も撮ってます。

 

狂騒の20年代を這いずり上がって駆け抜けて落ちた男の生業を描くのに世相のトピックを適宜差し込んで文字通り映画も駆け抜ける。為さぬ恋の終焉を噛み締めて黙って凋落するキャグニーの侠気。腐れ縁で側にいるグラディス・ジョージの存在が又いい。(cinemascape)

 

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