★★★★★ 2019年9月11日(水) TOHOシネマズ梅田7
どういうめぐりあわせか知らんが、市井昌秀の映画はなぜか初期の「無防備」を含めてほぼ見ている。
「ハルチカ」なんていう少女コミック原作のジャニーズの男が主演している映画なんて、狭いキャパの劇場であったが、10代~20代の女子で満席の中でおっさんが1人っていう状況で見たのだが、そのへん先般見ずに帰った男闘呼組映画のオバ様で満席とは我慢のし甲斐が違ったのだろうと思われる。
元来、演出上の主張をあんまりしない人だと思うのだが、しかし、人が対峙するなかでの無言の空気を鋭くキャッチアップするのに長けている人だと思うのだ。
「ハルチカ」のラストや「箱入り息子の恋」の丘陵でのデートシーンとか。
今回も、草彅が主演ってことでオバさま方が多かったが、俺は彼があんまり好きじゃないんです。クソ真面目そうで面白みがない。
でも、ずっと市井の映画を見てるので、意地で見た。
今回は主張してると思った。
ゲス人間が集う1軒の家での狂騒的やりとりは、明らかに「しとやかな獣」みたいな線を狙っている。そして、かなりに人捌きとか構図取りとか成功している。
ただ、その中でやっぱり草彅が弱い。彼はゲス人間ではなさそうなので無理感がある。
そのへん、新井やMEGUMIといった根っからのゲス感が横溢するキャストの中で圧倒的に弱い。
でも、そこは目をつぶろうと思った。映画にそれだけの牽引力があったからだ。
終盤、映画は閉塞空間から解放されて、同時にゲス人間どもは浄化されていく。
海辺に到達した一行だが、ここで市井監督の持つ特質である空気を写し取るセンスが全開する。
新井の粗相で公開が危ぶまれた映画だが、公開されて良かったと思います。
新井も好演でした。
遺産を巡るあれこれは事態の変転速度と戸内での出入り捌きが良く澱みない出来だ。子への親の愛という真相のベタをベタで相殺する8人連続スローモーションを機に屋外へ展開した骸骨騒動が朝靄の凪の海で閉じるときそれは訪れる。想いがひとつになる何かが。
遺産を巡るあれこれは事態の変転速度と戸内での出入り捌きが良く澱みない出来だ。子への親の愛という真相のベタをベタで相殺する8人連続スローモーションを機に屋外へ展開した骸骨騒動が朝靄の凪の海で閉じるときそれは訪れる。想いがひとつになる何かが。(cinemascape)