男の痰壺

映画の感想中心です

高倉健

八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」が公開されたのは中3のときであった。両方とも映画館で見たが今いちと感じた。
これが、俺の高倉健初体験だったと思う。
その後、「野生の証明」「冬の華」「駅 STATION」「海峡」など懲りもせずに見に行ったが全て今いち。高倉健目当てだったわけでもないが、しかし、作品の印象が健さん=大味凡作とイメージづけられていく。
演技も、まあ言っちゃなんだが幅が狭く、俺の中の健さんイメージは不器用だけが取り柄のおっさんであった。
しかし、30歳代になって新世界界隈の映画館で任侠映画を貪るように見だしたころになって漸くわかったのだ。
健さんが何故スターなのかを。
60年代後期の東映任侠映画群の中で彼が突出してたのは、その殺陣の無手勝流的オーラである。
とにかく、たたっ斬ってやるという波動がビシビシ伝わってきて、段取りを無視したかのような速さがある。
鶴田や藤純子には、それは無い。
東映ヤクザ映画史が語られるとき、事件として、深作・文太の登場が位置づけられるが、おそらく健さんの登場も、当時の映画館においては、それを上回るような事件であったのだろう。
とにかく、この頃の健さんは今見てもかっこいい。
 
だから、思うのだ。
幸福の黄色いハンカチ」を代表作として語られる205本は全く的を射てない。
まあ。本人は草葉の陰で納得してそうだが。
ご冥福をお祈りします。
 
(尚、後期の作品の中で「遥かなる山の呼び声」「居酒屋兆冶」「夜叉」「ブラックレイン」の4本は別格的に好きだが。)